東京凰籃学院 中学受験の部屋

中学受験で燃え尽きないために


 中学受験が好ましくない形で中学以降に影響を残すケースとしては,次のような場合があります。いずれも中学に入ってから勉強が停滞します。ここで対処を誤ると,中学から高校にかけての基礎を形成する時期にチャンスを逃してしまい,小学生的な「単なる反射神経,表層的で浅薄な思考回路」のまま留まってしまう危険があります。

(1) 中学受験勉強の過程で塾の進度についていけずに,頭が混乱してしまった場合。
(2) 塾で下位にいた経験や,不合格体験が大きく自信を打ち砕き,その後やる気をなくす。
(3) 頭がよくて,あまり苦労をせずに中学に受かったために,その後油断しまくる。
(4) 「中学に入ればあとは楽ができる」と叩き込まれて勉強してきたために,本当に遊びまくったり部活を口実に勉強をさぼる。
(5) 中学に入ってからレベルの高い塾に行き,あるいは一貫校の一部強引なカリキュラムに直面して,いきなりマニアックな問題や高校範囲の内容を課されて混乱する。

 中学入学前に留意するのは,挫折感を極度に植え付けないようすることです。どんな環境であれ,「下位にいる」というのは子供にとってたいへんなストレスになります。また,志望校に合格した場合は,(3)(4)のようにならないように,「中学以降もそれなりに勉強する必要がある」ことを訴えましょう。

 ところで,現実問題として(1)〜(5)のような状況は,多くの中学受験経験者にみられます。従って,中学入学後の対応も非常に重要です。

 (1)のように知能面で混乱しただけであれば,中学で教科書レベルからきちんと勉強すれば大丈夫です。中学受験の勉強と中学以降の課程は別物です。しかし,(2)のような精神的状況を伴う場合には,一刻も早く成功体験を作る必要があります。そのためには,今いる中学で上位の成績をとるのが最も治癒効果が高くなります。ところが,多くの場合,高校受験での挽回を期して,あるいは大学受験を意識していきなり難しい内容に取り組み,(5)の状態に陥ってしまいます。この場合,下手すると基本事項に穴が空き,公立中学での期末試験でさえも上位に食い込めなくなるおそれがあります。あとは自信喪失と成績低迷の悪循環が待っています。

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1 公立中学,またはカリキュラムが楽な私立中学に行った場合

 そこで望まれることは,とりあえず中学1年生の間は無理せずに,教科書レベルの基本や学校でくれたプリントをしっかりやって,定期試験で好成績をおさめることを最優先にすることです。また,中3までの時期は,数式処理や英語構文の把握など,大学受験に向けて絶対に欠かすことのできない基礎学力を養成する時期です。公立学校のカリキュラムに相当する内容をしっかりと消化することが重要です。

 高校受験でも無理してはいけません。あまり目立ちませんが,「高校受験で燃え尽きる」というのもあるのです。中学生の時に無理をして難問ばかりやっていると,とりあえず高2までは模試で名前が載ったりして順調に見えることもあるのですが,一番肝心な高3の後半で基礎の欠落から伸びが止まったりします。中学課程の基礎は想像以上に重要です。

2 有名一貫校に行った場合

 「他の人が東大受験のために中1から塾に行っているのに,のんきなことを言っていて大丈夫なのか」と思う人も多いようですが,レベルの高い勉強をいきなりやって混乱を来す人があまりにも多いのです。有名私立一貫校の高3生の下位3分の1ほどは,中学2年程度の内容に欠落があるために伸び悩んでいます。いったんこうなってしまうと,浪人しても一流大学に合格するのは難しくなります。

 ここは「急がば回れ」です。一貫校で進度が速い場合には,学校のカリキュラムにさえついていけないこともありえます。そういうときは,とにかく公立学校の正規のカリキュラムにたち返って,これより遅れないようにきちんと勉強して安心感をとりもどしましょう。それが停滞を脱する最良の手段です。

 勉強が停滞しているときには,間違っても,塾に行き高度な勉強をして挽回しようなどと考えてはいけません。難問をいくら覚えても基本処理能力は身につきません。玉砕し続けるだけです。また,一見順調に見えても,中学での基礎が抜けていると,やはり高3で頭打ちになります。

 英語や数学以外に,たとえば世界史でも,中学の歴史の範囲をしっかりやってアウトラインを形成しておけば,高校で膨大な暗記事項が襲ってきても,基本的な時代や事件の枠組みにきちんと整理して収めることができます。従って,一部進学校で見られる「中学と高校の歴史をまとめて扱う」ような手法は必ずしも効果的とは言えません。一貫校のカリキュラムは,その点注意が必要です。

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 なお,(2)や(5)を放置した場合,精神的ダメージから,専門の治療を受けるに至るケースも少なくありません。無理をせず,一刻も早く成功体験なり安心感なりを得るのが重要です。

 皆様のご健闘とご成功を祈ります。


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